町田まわるまわる図鑑 〜パリコレッ!ギャラリー・アーティストインタビュー〜 <アーティスト:勝亦勇>

開催:2024年5月25日(土)〜31日(金)

町田で月イチでアートが楽しめる「パリコレッ!ギャラリー」第30弾は、
町田市在住のイラストレーター:勝亦勇さんの個展を開催します。

勝亦さんは2022年にパリオ応縁プログラムにて「格闘画」をテーマに個展を開催。
颯爽とした墨の線が美しい、等身大の格闘画が並びました。

本展では、ドラゴン、グリフォン、ユニコーンなど、
神話や伝承で知られたモンスターの墨絵作品20点以上を展示いたします。
会期中には、巨大なドラゴンを描く墨絵ライブペイントも開催いたします。

勝亦さんに墨絵の魅力や、ご自身の主催している町田クロッキー会のお話、
今展示の見どころなど、様々なお話を伺いました。

◾️勝亦さんが墨絵で作品を描かれるようになったきっかけを教えて下さい。

専門学校卒業後は、グラフィックデザインの仕事に集中していて、しばらくは、絵を描くことから離れていました。2007年ごろから、絵の活動もしたいと思い、グループ展などに出展して、どういうことをテーマにしたらいいかを考えながら活動していました。そこから自分が10代の頃からやっていた武道や格闘技をテーマにし、少しずつ形にしていきました。格闘技の動きやシーンを作るのに「筆の動きを足したらどうか」と思って、当時はデジタルで作品制作をしていたので、デジタル作品にアナログの墨の線をコラージュするような作風から制作をするようになりました。それをきっかけに、だんだんと画材を墨のみの手描きに絞るようになっていきました。自分は作品制作においてダイナミックな表現も細かい表現もできればいいと思っていますし、完成も早く見たいという性分なので、それらの特徴を兼ね備えていた墨絵は性格的にも合っていたと思います。

◾️勝亦さんの思う墨絵表現の魅力を教えてください。

自分の考える墨絵の魅力は、モノクロで描かれるというところではないでしょうか。逆にモノクロで苦労することもありますが、工夫を色々と考えられるのが難しくて
奥深いところだと思います。また色がないぶん想像力をかき立てられるというか、
見た人の感覚や記憶の中で色が作られるところが好きですね。

◾️勝亦さんは、普段格闘画を多く描かれていますが、モンスターやドラゴンを描かれるようになった経緯はありますか?

元々はデザインフェスタというアートイベントで、自分がドラゴンを描く巨大ライブペイントを行なったのがきっかけでした。ライブペイントを描き始めた当時は巨大ライブペイントの壁に申し込む人が少なく、対して展示ブースの方は抽選が多く、申し込んでも外れることが出てきたので、これをきっかけになり2015年に巨大ライブペイントに挑戦しました。「せっかくでかい絵を描くなら、大きいモチーフがいいな」と思ったところで、ドラゴンをモチーフにしました。その理由も等身大の大きい作品を見せて、わっと驚くようなエンターテイメントを見せたいという気持ちから始まりました。この一回目のライブペイントが好評だったので今も定期的に出展していますが、活動の中でモンスターのアートブックを作ったり、表現の範囲を広げていったり、自然とモンスターを格闘技の絵と同様にアートワークとして描いていくことにつながりました。今回パリオでの展示でもライブペイントを行いますが、ドラゴンのサイズ感や迫力が伝わるように描くので、そこはイベントの見所ですね。巨大ライブペイントで描いていたドラゴンの関連イベントを、他の場所でもやってみたいとはずっと考えていたので、今回の町田パリオの展示で「モンスター」をテーマにした展示会を実現しようと思いました。「格闘画」のアートワークの展示は、一昨年に町田パリオで開催しているので、ここで一つ趣向の違う展示を開催しようと思ったのも理由です。また、モンスターは様々な世代に楽しんでもらえるモチーフでもあり、パリコレッ!ギャラリーの子どもから大人まで三世代が楽しめるイベントの意図にも合うと思いました。

◾️勝亦さんの作品は伸びやかな勢いのある美しい線が特徴的ですが作品制作の上でこだわりのある部分はございますか?

描くテーマに合った表現を心がけています。普段使わない道具もなるべく試して、必要以上に描き方をこだわらないようにしています。また、こだわりとは少し違うかもしれませんが、自分の作品仕様みたいなもので、ほぼ半紙サイズ(※1)で描くことが多いです。乾燥のプレス機が半紙サイズだったり、データ化を一回のスキャンで終わらせたりすることができるのも半紙サイズなので、納品のしやすさなど制作を進めていく上でのこだわりはありますね。それはデザインの仕事上そうしているところはあります。以前町田パリオで行なった個展「格闘画」では、等身大の絵で迫力を演出したり、展示空間のメリハリを作ったりしたのはすごく特殊なケースでした。

(※1)半紙サイズ - 半紙とは、和紙の規格の一つ。現代では縦33.4cm×横24.3cmの寸法のものが多い。

◾️勝亦さんの作品は伸びやかな勢いのある美しい線が特徴的ですが作品制作の上でこだわりのある部分はございますか?

描くテーマに合った表現を心がけています。普段使わない道具もなるべく試して、必要以上に描き方をこだわらないようにしています。また、こだわりとは少し違うかもしれませんが、自分の作品仕様みたいなもので、ほぼ半紙サイズ(※1)で描くことが多いです。乾燥のプレス機が半紙サイズだったり、データ化を一回のスキャンで終わらせたりすることができるのも半紙サイズなので、納品のしやすさなど制作を進めていく上でのこだわりはありますね。それはデザインの仕事上そうしているところはあります。以前町田パリオで行なった個展「格闘画」では、等身大の絵で迫力を演出したり、展示空間のメリハリを作ったりしたのはすごく特殊なケースでした。

(※1)半紙サイズ - 半紙とは、和紙の規格の一つ。現代では縦33.4cm×横24.3cmの寸法のものが多い。

パリオ応縁プログラム勝亦勇 個展「格闘画」 2022.10.21(金)〜10.24 (月) 町田パリオ3Fギャラリー・パリオ

◾️1つの作品を制作されるのにどれくらいの時間をかけられていますか?

基本的には清書に入る前の下書き、絵の構想の方に時間がかかります。清書自体は1日、2日くらいで終わります。意外に早いと言われることがありますが、ほとんどの作品は下絵の段階で決まりますので、そのぶん準備に時間をかけているところがあります。大きい作品だと一度下絵を実寸大でプリントしてみたり、試作品を作ったりなどもします。墨絵に描きおこすとイメージと違ったということもあり、その場合は一度構想から練り直してみたりはしています。一発で決まった「これいいね」と思う作品もあれば、何度もやり直しをして「もうイヤだ……」と思わず言っちゃうような作品もありましたね。

◾️普段、どのようなモチーフを好んで描かれていますか?

人物画を好んで描いています。今回のようにモンスターを描くこともありますが、基本的には人物をメインにすることが多いです。仕事でも人物を描くことが圧倒的に多いので、人物画をクロッキーやデッサンで慣れ親しんでおくと、思ったような人物画が描けたりする瞬間があり、手応えを感じることがあります。自分はクロッキー会を主催していますが、自分の作品制作の中で普段描いているクロッキー(※2)を活かした表現ができるようになってくると、作品にいい感触を得られることが多いので人物を描くことはとても楽しいですね。

(※2)クロッキー - 速写と言い、人や動物、静物などの対象を素早く描画すること、またはそうして描かれた絵そのものを指す。スケッチ(写生)とも言うが、特に短時間(10分程度)で描かれたものをクロッキーと称する。

◾️勝亦さんは生涯学習センターで「町田クロッキー会(※3)」を開催されていますが
どのようなきっかけではじめられましたか?

元々自分が地元である町田でクロッキー会をやりたいという希望があり、展示などでお世話になった方に相談して、モデル事務所を紹介してもらったり、開催場所をお借りしてスタートしました。初めは希望者同士で集まった相乗り企画でした。みんなで参加費を出してやろうみたいな感じで。素描としてデッサンではなくクロッキーを選んだ理由ですが、人物デッサンだと1回の固定ポーズを大体2時間半から6時間くらいおこなうので、会場の都合上開催できる回数がどうしても少なくなりがちです。クロッキーは沢山ポーズを描くので飽きずに続けられますし、量を描くことは絵の練習にもなりますのでクロッキーをメインにしています。デッサンの回も定期的に開催しています。クロッキーには練習としての魅力と、素描作品としての魅力があると思います。練習に関していうと、必ず始まりと終わりの時間が決められているので、描くことを繰り返す状況ができる点。あとは要点を素早くつかんで描く練習にもなるというところが魅力です。作品制作において早い時間で構図や要点を押さえていくことは、沢山作品をつくることにも影響してくると思います。素描作品としての魅力は、完成されていない線の魅力があると思います。完成前の期待感、想像力が膨らむ線があります。素描は人に見せることを前提に描かないことが多いので、小さくまとまらず描かれているのも魅力だと思います。

(※3) 町田クロッキー会 - 勝亦勇さんを主催として、東京都町田市で開催しているクロッキー会。JR・小田急線町田駅近くの会場で、毎回プロのモデルさんを描く人物クロッキーを開催している。 

◾️ご自身の作品の中で思い出深い作品があれば、エピソードを教えてください。

自分の作った作品の中で、思い出深い作品は色々とありますが、町田つながりでもある「フェスタまちだ2016(町田エイサー祭り)(※4)」のポスターやチラシで使う絵を描いたことですね。これは公募で描いて採用されたものですが、自分の住んでいる街で自分の描いたものがずらっと並ぶのを目にする機会なんて珍しいですし、非常に貴重な体験だったなと思いました。

(※4)フェスタまちだ(町田エイサー祭り)- JR横浜線・小田急線「町田」駅前で行われる、エイサー祭りをメインとした町田市の一大イベント。メインとなる原町田大通りやカリヨン広場に、全国から沖縄エイサー踊りの団体が演舞を披露し、町田を盛り上げる。

◾️町田で好きな場所などはありますか?

町田は商業都市なので好きな「店」は沢山ありますが、好きな「場所」と言われると難しいですね。強いて言うなら駅前の賑わいや、よく待ち合わせで使われる小田急の花屋の前とか、横浜線と小田急線の交差する雑踏とかの雰囲気が好きですね。あとは、定番ですが版画美術館ですね。

◾️影響を受けた、または好きなアーティストの方はいますか?

色々作品を見てきた中で今の自分があるので、影響を受けた人を特定することは難しいですけど、好きな芸術家だと彫刻家の成田亨(※5)さん。好きなイラストレーターだと昭和の挿絵画家の伊藤彦造(※6)さんや小田富弥(※7)さん、海外ではバーニー・フュークス(※8)さんの素描作品が好きですね。

(※5)成田亨 - 日本のデザイナー、彫刻家。青森県出身。日展に出品する芸術活動、東映特撮美術や、ウルトラマンや彼と戦った怪獣達のデザイン、 松竹の特撮美術等を手がけた。

(※6) 伊藤彦造 - 日本の画家、イラストレーター。大正から昭和にかけて活動、主に剣戟の挿絵を描き、細密なペン画で一世を風靡した。
剣豪、伊藤一刀斉の末裔に生まれ、自らも剣の師範であった。

(※7) 小田富弥 - 大正時代から昭和時代の挿絵画家、日本画家、木版画家。時代小説の挿絵に新境地を拓いた。

(※8) バーニー・フュークス - アメリカ合衆国のイラストレーター。広告芸術や雑誌イラスト、アメリカ郵便切手シリーズ等の肖像画で知られている。

◾️最後に、パリオにいらっしゃる来場者の皆様に今回の展示の見どころや伝えたいことがあれば教えてください。

展示タイトルの通り「モンスター」の絵を沢山展示します。モンスターは現在娯楽として親しまれ、多くの人にデザインされてきました。今回の展示に向けてすべて新作を制作し、自分自身も楽しみながらモンスターをデザインしました。墨のモノクロ表現や、ライブペイントも今回展示の見どころです。以前町田パリオで行った武道・格闘技の展示の時もそうでしたが、色々なものが見られるオールスターみたいなものが好みだったりするので、モンスターだらけのお祭り感を展示空間に作ろうと思っています。モンスター好きの人も、ちょっと知っているだけの方も、見たことのあるモンスターたちがいると思います。墨のタッチで躍動するモンスター達をお楽しみください。

勝亦勇 プロフィール

神奈川県出身町田市在住。広告デザイン会社を経て、2006年より本格的に創作活動を開始する。現在イラストレーションでの主な画材は毛筆と墨を使用し、画面にインパクトを残す躍動感と、迫力の構図を得意とする。イラストレーション制作のほか、グラフィックデザイン、ライブペイントなども行う。町田市内で人物画を描く町田クロッキー会も主催する。

●過去の個展歴
2022年 格闘画(東京)
2014年 Ninja 2(ロンドン)
2012年 忍者(東京)
2010年 格闘画廊(神奈川)
2009年 相撲展(神奈川)
2008年 Martial Arts Museum(神奈川)
他グループ展、イベント出展多数

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