町田まわるまわる図鑑 〜パリコレッ!ギャラリー・アーティストインタビュー〜 <アーティスト:菅野春佳>

開催:2022年7月24日(日)

町田で気軽に上質なアートが楽しめる「パリコレッ!ギャラリー」。
第22弾は相模原市在住のアーティスト・菅野春佳さんによる個展を開催いたします。

アーティスト活動の傍ら、図書館司書として働かれている菅野さん。
油絵やコラージュといったご自身の作品制作から、
現在の絵本をテーマとしたコラージュワークショップにいたる経緯まで、
これまでの歩みや人と人との繋がりの大切さをお話しいただきました。

2019年6月15日 ギャルリーヴェルジェ個展 いのちの森ワークショップ

●菅野さんは、ご自身の個展や公共施設などでワークショップを開催されていらっしゃいますが、始められたきっかけを教えてください。
2019年に開催した、ギャルリーヴェルジェでの個展の会期中に開催したワークショップ(いのちの森ワークショップ /『いっしょだよ』小寺卓矢著 アリス館)がはじめです。きっかけは2016年に相模原の障がい者施設で起こった事件でした。自分の住んでいる街であんな凄惨なことが起きて、地域に何かできないか、声をかけあえるような場を作れないかと思い、ワークショップをやってみようと思いました。あと、トリエンナーレのような地域イベントで参加型の巻物のような大きな作品を作ってみたいと思っていました。そんな色々なきっかけが重なり、ワークショップをやってみようと思いました。

●ワークショップでは、みんなでひとつの作品を作り上げていくということですが、何か指示やアドバイスを出されたりしていますか?
ワークショップの時は、参加者の方にアイデアやヒントを伝えたりすることはあるんですけど、基本的にはお任せです。みなさんに想像以上のものを作っていただけるので、見ていてとても面白いです。今回は台紙に、町田の要素としてリス園だったり薬師池公園だったり、ちょっとしたガイドは入れているんですけど、町田の街を作り出す方もいらっしゃると思うので、あえて余白を残しています。この余白がこれからどうなっていくのかとても楽しみです。子どもたちにとっても自分の街を見直すきっかけになるかもしれないですし。今回展示タイトルにもなっていますが、やっぱり「ふるさと」は大事にしてほしいというメッセージもあります。

●ワークショップのコンセプトはどのように決められていますか?
ワークショップは絵本をテーマに構成していて、個展でやる時は絵に興味がある方が参加されるので、想像性を入れられるような絵本を選ぶようにしています。こども食堂などの公共施設では、例えば「魚」をイメージしやすい『さかなってなにさ』(せなけいこ著 金の星社)という絵本を選んだり。あと、『すばこ』(キム・ファン著 イ・スンウォン画 ほるぷ出版)という絵本は、巣箱を作って鳥を呼んで森を救うというお話です。やっぱり良い絵本をお客様にお見せしたいです。選書の時は司書の思考が入ってきちゃうんです。

2019年7月21日 相模原市麻溝公民館 あさみぞみんなのコミュニティ 
さかなってなにさワークショップ

2019年9月7日 五人展 ギャラリー誠文堂 すばこワークショップ

●まさに司書さんにしかできないセレクトですね。図書館司書になられたきっかけはなんだったんですか?
美大に通っていた時にたまたま募集していた図書館のアルバイトがきっかけです。昔から図書館で働きたいとは思っていたんですけど、そんなに具体的じゃなくて。でも小学校の時の卒業アルバムを見ると、不思議なことに図書委員会に入っていたりするんです。ワークショップをやり始めてからは、作家と司書が結実して、自分のスタイルとして確立し出してるんじゃないかと思います。今回の展示でテーマとしている絵本『ひつじぐものむこうに』もそうですが、選書もすんなりできるようになって、司書に出会えたことは奇跡的ですし、職場の方々や環境に恵まれていたんだと思います。

●油絵やコラージュといった幅広い表現で作品を制作されていますが、ここに至るまでにどのようなプロセスがあったのでしょうか?
高校は美術コースのある学校に通っていて、卒業制作では障子紙を染めたものでオブジェを作りました。本来は、紙を色で染めた作品を作りたかったんです。油絵もこの頃から描いていて、画布に油絵の具を載せて紙で版画のように押し付けるのを繰り返しながら制作するんですけど、その時使った紙をずっと取っておいていたんです。その紙をスケッチノート一冊にまとめたものが結構好評で、以降その紙をコラージュの素材として使うようになりました。油絵も描いて、コラージュも続けて…そうすると、自分の土台を広げる手段として、油絵もコラージュも必要だったんだと思っています。

1994年 千葉県立幕張東高等学校卒業制作 『秋風』

2002年 スケッチノートより

●試行錯誤があって現在のスタイルを確立されたんですね。
そうですね。油絵をやりながらコラージュの世界も広げられたましたし、また、ワークショップというスタイルに結実したことで、仕事と作家活動がひとつになった感じです。結果的にワークショップの中でみんなでひとつの作品を作るということが自分の新たなスタイルかと思います。前は極端に制作と仕事を分けていたんですけど、いろいろな方と関わりながら繋がったことで、今ワークショップができているんだと思います。自分だけで辿り着いたわけじゃなく、周りのみなさんのおかげです。でも油絵も見たいと言われるので、相変わらず試行錯誤しています(笑)

●「こころ」や「いのち」という一貫したテーマで作品を制作されていますが、どのような経緯があったのでしょうか。
まず、絵を描くきっかけとして、自分がすごく辛い時期があったんです。両親があまり健康ではなくて、ヤングケアラーのような状態だったんです。ご飯を作って、学校に行って、親が入院したらとうとう動けなくなっちゃって、自分の時間が持てなくて…というのが高校の頃で。絵がないと生きていけない時期でした。なので、自分の気持ちを表現するために、「こころ」や「いのち」をテーマとして持ってきているんだと思います。

●菅野さんの作品を鑑賞していると、どこか懐かしい雰囲気も感じられますね。
そうですね。絵は、心が疲れてしまっていた頃に生きるために描いていたけど、今子どもを育てながらやっていると、自然と幼少期を思い出す事があって、絵を描く事は無意識のうちにそこに立ち返っているんだと気付いたんです。昔の記憶を呼び起こして絵の中で構成する。だから鑑賞者の方が懐かしいと感じるのかも。

2019年 『家族』

2018年 『ソレゾレの関係』

●今回の展示について教えてください。
今回は、『ひつじぐものむこうに』という絵本をテーマにワークショップを展開しようと思っています。この絵本でイラストを担当されている長谷川知子さんは町田市在住の絵本作家の方なので、町田で町田に所縁のある絵本をテーマに展開したいと思いました。せっかく町田で展示をさせていただくということで、町田の街をみんなで作ってみたいと思いました。多くの方に楽しんでいただければという想いで、参加費は無料としています。ぜひ、気軽に参加してほしいです。

2022年7月 町田パリオ こころのふるさとワークショップ

●まさに町田のための展示会になりそうですね。数ある長谷川知子さんの作品の中で、この『ひつじぐものむこうに』を選書された理由はなんですか?
やっぱり、良い絵本だからです。ワークショップの作品は、だいたい読書感想文の課題図書や国語の教科書に載っている本から選んでいるんです。これらは本当に良い本が多く、『ひつじぐものむこうに』は小学校の国語の教科書に載っている本の一冊になります。長谷川知子さんの作品は本当に数が多くて迷いましたが、この絵本からは町田市の情景を想像して自由な世界を広げていけると感じたので、やっぱりこれだと思いました。

-『ひつじぐものむこうに』(あまんきみこ・著/長谷川知子・絵 文研出版)
好きな男の子が転校してしまい、ため息ばかりついていた女の子が、突然雲からやってきたひつじに連れられて雲の中へ旅に出ます。雲から見た地上の世界は、ため息ばかりついている家は紫色に、笑い声があふれる家はオレンジ色に見えます...

●菅野さんにとって町田はどのような印象ですか?
「ゆりかごから墓場まで」という言葉通りの、なんでも揃っていて、生まれてから死ぬまで不自由なく生活できる場所だと思います。私は相模原に住んでいますが、相模原も町田も魅力的な作家さんがいらっしゃって、文化的にクオリティが高い街だと思います。なので、作家としての活動がとても刺激的ですし、自分もこうやって柔軟にワークショップの開催まで辿り着けたのも、この土地に来たからだと思っています。

●今回の展示会の来場者の方々へメッセージをお願いします。
コロナがあって、いろいろな方と気軽に出会えなかったり、語らえなかったりしますが、これまでたくさんの方に助けられ支えられてここまで来られているので、少しでも皆さんの心安らげる居場所をご提供できたらと思っています。本当にそれだけです。良い絵を見せたいとかそういうのじゃなくて、ちょっと休憩しに来たとか、会えてよかったとか、いろいろな方々にとってそういう場になれればと思います。

菅野春佳 プロフィール

千葉県出身、神奈川県相模原市在住。
武蔵野美術大学通信教育課程卒業。
相模原芸術家協会会員。
油絵やコラージュ作品のほか、ワークショップを開催して、
人とのつながりや居場所を作る活動を行っている。

パリコレッ!ギャラリー vol.22
菅野春佳「こころのふるさと」

相模原市在住の絵画作家・菅野春佳による個展を開催。
絵本とコラボしたワークショップにて来場者と共に制作した作品を展示するほか、
会期中は町田市をスポットに当てた「こころのふるさと」をテーマとするワークショップも開催いたします。
ふるさとの魅力を再発見できる、心安らげる場をお楽しみください。
会期中は、作家による絵本の読み聞かせとコラージュワークショップも開催いたします。

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