町田まわるまわる図鑑 〜パリコレッ!ギャラリー・アーティストインタビュー〜 <現代美術家:コバヤシ麻衣子>

開催:2021年11月15日(月)

町田で月イチでアートが楽しめる「パリコレッ!ギャラリー」の第15弾は、
国内外で活躍中の現代美術家・コバヤシ麻衣子さんの展示です。
2021年11月22日(月)より、パリコレッ!ギャラリー vol.15 コバヤシ麻衣子「親愛なる名のない街とあのときの君に」の開催にあたり、お話を伺いました。

●コバヤシさんの作品に出て来る「いきもの」はいつから生まれましたか?
2000年頃になります。その当時はデザイナーを志望していて実際に企業で働いたりフリーで色々活動をしていました。一方で、内側に抱える不安や葛藤も多く、焦燥感に駆られる日々でした。そういう中でボランティアを志願して参加した国際的なアートイベントを通して現代アートに触れ、自分を表現する手段をデザイン以外でも見つけられたような気がしました。「いきもの」はその頃から自分だけのために描き始めました。

●「いきもの」の表情はどこかアンニュイな印象を受けますが、表情の理由はなんですか。
よく聞かれます。元々は自分の気持ちを映し出す鏡のような存在だったので今よりももっと哀しい顔をしていた頃もありましたが、例えば、何か事情がない限り、人が1日の大半を笑っている、泣いている、怒っていると言ったわかりやすい感情表現だけを持って過ごすことってそんなにないと思うんです。嬉しいことや不安なこと、少しの情熱とか焦りとか色々なものを抱えながら過ごしていると思うんですね。そういう何でもないニュートラルな状態って最も人間のリアルを感じるものだと考えていて、それを表現した結果がそのような印象を人に与えるのかもしれません。生きるってこと自体が実は結構大変なことだと思います、だから存在しているだけでも十分なんですよね。そんなことを考えながら描いているので、アンニュイな感じになるのかな?(笑)私としては、人間の素の表情にとても近いのではないかなと思っています。

●作品に使用する画材はどのようなものですか?
絵画作品は、アクリル絵の具とキャンバス、木パネルも時々使います。絵の具を使う前の下地に和紙を破いて全体に貼っています。2015年頃から使い始めましたが、これにより自分なりの手法が確立していったように思います。

●作品を制作する上で心がけていることはなんですか?
目の前にその「いきもの」が本当に存在しているように常に感じられるかどうかですね。あとは、自分に嘘をつかないこと。描きたいと思うこと、直感を否定しないこと。

●これまで制作された中で印象に残っている作品はありますか?
縦1.5メートル、長さ3メートル位あるドローイングが3枚程あるのですが、どれもその時にしか描けない環境の中でエネルギーのある作品でした。また近いうちにこういうドローイング作品を描けたらと思っています。

●影響を受けたアーティストはいますか?
アートイベントをお手伝いしたときに出会った、ポーランドの画家スタシス・エイドリゲヴィチウスさんと、自分のスタイルで絵を描くことを後押ししてくれたと感じているのは現代美術家の奈良美智さんです。奈良さんの制作に対する姿勢には特に影響を受けていると思います。宗教彫刻や絵画では人間存在の普遍的テーマについて、神話を題材にした彫刻やロダンなどの近代彫刻には身体の動きや表情における表現について、画家のマーク・ロスコやサイ・トゥオンブリーといった抽象表現主義の作家たちからは、色の作用や絵画空間を構築するもの、痕跡について等、学んでいます。

●制作の中でなにか自分のルーティンはありますか?
絵を描くときは必ずヘッドフォンで音楽を聴きますね。絵以外の全てをシャットダウンできるので。音楽は幅広く聴きますが、制作中はJPOP(Jロック含め)が特に多いですね、あとはクラシックとか洋楽ポップス・ロックです。ポップスはその時々の大衆・社会の空気感を知ることができるし、基本メロディアスなものが好きなので、アイドルでも何でも含めサブスクで色々探して聞きます。年代的にもアイドルやシティポップが流行った頃が思春期だったので、その影響が強いのかもしれません。

●コバヤシさんは海外でも個展を多数開催されていらっしゃいますが、国内での展示との違いはありますか。
多くは同じ反響です。「いきもの」に見る人それぞれに何かを感じてくれているようです。ただ、海外では「このいきものは何ですか?」と聞かれることはほぼないですね。そのままの存在を受け入れた上でどういう背景で描かれたかとかを聞かれるか、またはその方の思うことをこちらが聞く感じです。また、神道やアニミズムに関連して見る方もいます。
*アニミズムとは…生物・無機物を問わないすべてのものの中に霊魂、もしくは霊が宿っているという考え方。

●青年期、町田に住んでいらっしゃったということですが、何年間くらい住んでいらっしゃいましたか。また、町田の印象を教えてください。
25年くらいだと思います。明るさ、賑やかさ、といった快活な雰囲気と、暗さ、ディープさ、危うさといったものも同居する、いい意味でカオスな街だなという印象です。

●コバヤシさんおすすめの町田のお気に入りスポットを教えてください。
以前はジョルナの上にあったカフェノイズによく行ってました。
今は別の場所にあるみたいですね。今度行ってみます。

●今回の展示や作品について教えてください。
私にとって縁のある町田での展覧会ということで、そういう人生の中で出会う「街」をテーマに色々と思うもの感じるものを「いきもの」たちに語らせてみようと思いました。

●来場者の方にメッセージをどうぞ。
自由に見てもらえればいいなと思います。こんな世界があるんだなぁという感じで気軽に見にきていただけたら嬉しいです。



コバヤシ麻衣子 プロフィール

神奈川県生まれ、東京都在住。武蔵野美術大学短期大学部空間演出デザイン科を卒業後、デザイナーとして企業やフリーランスで活動しながら2002年より作家活動を開始、2007年渡英。翌年、英国国立ノーザンブリア大学大学院芸術社会科学研究科アートプラクティスコース修士号取得。現在、国内外の展覧会やアートフェアに参加、滞在制作を行う。

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パリコレッ!ギャラリー vol.15
コバヤシ麻衣子
「親愛なる名のない街とあのときの君に」

誰にも記憶に残る街が一つはあるだろうか。そこで過ごした日々をふと思い出すことはあるだろうか。今、この現在地から、心の中にあるそんな街や思い出にあなたならどんな言葉をかけるだろうか。その記憶や思いを絵にし、ひと時の間、鑑賞者との共有を試みる。

日 付:2021年11月22日(月)〜28日(日)
時 間:11:00〜18:00
会 場:3F ギャラリー・パリオ

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