<まちだこどもがつくる展覧会vol.2>「絵のあるパリオ 子どもの油絵展」イベントレポート

開催:2019年9月21日(土)〜24日(火)

パリコレッ!芸術祭2019
まちだこどもがつくる展覧会 vol.2 
絵のあるパリオ 子どもの油絵展

つくることが好きなこどもたちが、
何か新しい経験をやってみたい!と思った時に
機会を与えられる場があればいいな、
という想いから生まれた
「まちだこどもがつくる展覧会」。

第2回目が、2019年9月21日(土)〜9月24日(火)まで
町田パリオ4F パリオフィールドにて
開催されました。
 
今回は町田市・川崎市にある絵画教室
「アトリエ一番坂」のこどもたちによる展覧会。
小学1年生から高校3年生のこどもたちが
集まりました。

なんとなんと、460m2以上ある
4Fのパリオフィールドで開催したい!ということで
会場の規模も、企画自体も、
とってもビッグな展覧会になるぞ・・!
と確信しました。
 

「まちだこどもがつくる展覧会」とは、
こどもたちだけで1から展覧会をつくる企画です。

「展覧会をつくる」ということは、
作品をつくるだけではなく、
展覧会そのものの企画やテーマ、
ポスターやダイレクトメールのデザイン、
会場の空間デザインなど…
考えることがたくさんあります。

企画のテーマを考える会議からこどもたちが参加し、
とっても白熱しました。

近年、機械化・AI化が進み、
生活がとても便利になってきています。
その中で、人間の手によって作られるアート、
油絵は何度も何度も描いたり消したりして、
自分の中の正解を探し続ける。
試行錯誤の中作られます。

今の時代、機械が簡単に正解を導いてくれますが、
油絵は、言ってみてしまえば、
とても原始的な過程の中から生まれます。
それはAIには出来ない、
人間にしか出来ない特別なことなのではないか?
と考えました。
そこから行き着いたテーマが「AIにはできないゾ!」でした。
 
*
 
まずは作品の制作に取り掛かります。
こどもたちみんなが、それぞれ表現したいものを考え、描き上げます。
   

今回のロゴデザインは小学5年生の子が
制作したものです。
クレヨンで油絵のキャンバスと文字を描き、
あたたかみのある、素敵なロゴデザインが
完成しました。
 
*
 
また、同時開催で同じ会場内にて
「生い立ち展」が開催されることになりました。
子どもの頃からアトリエ一番坂に通っていたOB・OG7人による展示です。
一番最初に描いた油絵から、現在の作風まで、
どのように変化していったのか、
まさしくその人の生い立ちをたどることができます。
   
*
   
夏にはこどもたちが会場を下見し、
どうやって飾ろうか?
どんな奇想天外な展示ができる?とふんだんに考え尽くしました。
 

いよいよ、会場準備に入ります。

 


毎年様々な場所で展示をしているアトリエ一番坂のこどもたち。
みんな手馴れていて、さすがです!
展示準備の流れがわかっているので、テキパキ動いていました。

そして生い立ち展の方々による展示作業も始まりました。
 
 

巨大な作品が多く、大掛かりな設営が続きます。
それを難なくこなせるのは、これまでの経験のたまものです。
 

この作品は空中に吊るしたい!
この作品はどうしたら良く見えるかな?と、
試行錯誤しながら、展示準備を進めていました。
 
*
   
9/21、12:00。そしていよいよ迎えた開場!
緊張の面持ちでこどもたちが
テープカットをしました。
初日から、こどもたちがつくりあげた展覧会を楽しみに、たくさんのお客さんが来てくださいました。

   

会場に並んだ作品は120点あまり。
入口に入った瞬間から圧倒される空間となりました。
 
展覧会が開催されている間は、会場に在廊してお客さんと話をしたり、
ギャラリートークをひらいて
自分の作品についての思いをお客さんに説明したり。
1から10まで、すべて自分たちで行います。
 
子どもたちは受付で元気よく挨拶し、アンケートを渡しに行ったり大忙し。
 

アンケートには「好きな作品を教えてください」という質問があり、
じっくり作品を見て回る方が多く、
中には2時間以上かけて会場を回られる方も!
 
アンケートは、
こどもたちが頑張って配った甲斐があり、
最終日には549枚集まりました。
 

より多くのお客さんに来てもらうために、
こどもたちは街にチラシを配りに行きました。

こどもたちの配るチラシは飛ぶように無くなり、
帰って来たらまたチラシをつくって、配りに行って、
またチラシをつくって・・・の繰り返しです。

その甲斐あって、たくさんのお客さんが
こどもたちから受け取ったチラシを持って見に来てくれました。


 

 

少し、展示の風景をご紹介しましょう。
会場入って右側の空間が、
こどもたちによる展示です。
 

 

濃密に緻密に描かれた油絵がここまで並ぶと、
驚きを通り越して少し身震いしてしまうほどです。
1点1点じ〜っと立ち止まって、ゆっくり時間をかけて見たくなるので、
見終わった後は充実感で心が満たされます。
  
*
   
会場入って左側には「生い立ち展」が開催されていました。

 
 

ただ作品を飾るだけではない、
床に置いてみたり、ちょっと斜めに設置してみたり、
絵に合った雰囲気の小道具を設置したりなど、
さまざま創意工夫凝らした展示空間を作り上げました。

*画像スライドで作品をご覧いただけます

会期中には、こどもたちが自分の作品について語る
ギャラリートークを開催しました。
 

どうしてこの油絵を描こうと思ったのか?
苦労して描いた場所はどこか?
ここ特に見て欲しい!という場所はどこか?
・・・などなど
様々なことを語ってくれました。
 

また、作品1点1点、
お客さんからひとことコメントも
いただきました。

はじめて作品を見たお客さん、
作品をつくりはじめた頃から
ずっと見守って来た教室の先生、
こどもたちのお父さんお母さんまで・・

それぞれの目線から、
作品についてお話ししていただきました。
 

また、スペシャルイベントとして
ミニコンサートを開催しました。
「あしたのクァルテット」さんたちによる
弦楽四重奏の演奏です。

 

よく耳にする馴染みのあるクラシックから、
子どもから大人まで皆が大好きな映画音楽まで、
様々な曲を披露してくださいました。

たくさんの絵の中で音を聴く・・
音楽と交わることでまたひと味違った
特別な空間が生まれ、
本当に贅沢な時間を過ごすことができました。
 

全ての作品1点1点が大きく、
こどもの身体と同じくらいのサイズがあります。

どれもとても迫力のある、圧倒される作品です。
ですが、それは単に絵のサイズが大きいからという理由だけではありません。

それもそのはず、こどもたちが描いた作品全て、
4ヶ月以上もの時間をかけてじっくり描かれた作品だからです。

描いては消して、描いては消して・・
繰り返し試行錯誤して絵の具を重ねた跡が、
1つ1つ大切に描いてきた軌跡のようで作品にかけた想いが伝わってきます。

そんなこどもたちの想いを見に、
4日間という短い会期にも関わらず、
述べ1,156名のお客様がご来場されました。

 

きっと、より良いものをつくりたい、
という想いが強いほど絵に魂が宿ります。

試行錯誤しながらより良いものをつくりあげることは人間にしか出来ません。

今、何でも便利なこの時代だからこそ、
「AIにはできないゾ!」が
より大切に思える言葉なのではないでしょうか。


 

文:塚原結友
写真:林絵美、高橋もも、塚原結友