<まちだこどもがつくる展覧会>「いま・ここ」 イベントレポート

開催:2018年9月2日(日)

「まちだこどもがつくる展覧会 vol.1」 いま・ここ

出展者
関谷賢人(高校2年生) 玉野翔大(小学5年生)
留目大志(小学4年生) 渡辺夏穂(高校2年生)
上河内航輔(小学3年生)中尾咲智(小学2年生)
平井紗弥(小学2年生)

題字デザイン
平高愛子(小学5年生)

ゲスト
並木スバル(油絵画家)
土屋慧

まちだのこどもたち<だけ>でつくりあげる展覧会
「まちだこどもがつくる展覧会」
2018年8月2日(木)から7日(火)まで、
町田パリオ3F フリースタジオ・パリオで行われました。
テーマは「いま・ここ」。

なぜ、こども<だけ>の展覧会なのかというと、
こどもたちは、どこかのコンクールに出品して自分の作品を飾ることはあるけれども、
「展覧会をつくる」経験はないのでは、と気づきました。

「展覧会をつくる」ということは、作品をつくるだけではなく、
展覧会そのものの企画やテーマ、ポスターやダイレクトメールのデザイン、
会場の空間デザインなど…やることがたくさんあります。
もちろん自分たちで搬入と後片付けも行います。

展覧会が開催されている間は、会場に在廊してお客さんと話をしたり、
ギャラリートークをひらいて自分の作品についての思いをお客さんに説明したり・・
とにかく1から10まで、すべて自分たちで行わなければなりません。

しかし、作品を見てくれたお客さんから直接感想をいただいたり、
自分の作った作品を<見てもらえる>ということが、今後の制作の糧につながることもあります。

また、私自身ずっと絵を描くことが好きでしたが、大学生の時まで展覧会をやろう!という発想すらありませんでした。
もし展覧会をやりたいなあ、と思ったとしても、こどもの力だけでは実現が難しいのが現状です。
そこで、つくることが好きなこどもたちが何か新しい経験をやってみたい!
と思った時に機会を与えられる場があればいいな、という想いから
「まちだこどもがつくる展覧会」は生まれました。

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今回、第一回目は玉川学園前にある絵画造形アトリエ「アトリエ・アルケミスト」のこどもたちにご協力をいただきました。
上は高校2年生から下は小学2年生まで、幅広い年齢のこどもたちが展覧会やりたい!と声が上がりました。

まずはじめに、どんな展覧会にしよう?どんなテーマにしよう?と案出しを行った時、
「自分たちが住んでいる場所」「自分たちが制作しているアトリエを紹介したい」という想いをベースにアイデアだしを行いました。
そこから、高校2年生の渡辺夏穂ちゃんの絵本作家としての名前が「coco(ココ)」だったことから、
「いま・ここ」という言葉が思いついたそうです。

鮮やかな色の指紋が連なりひとつひとつの色がきらきら光るような
「いま・ここ」のロゴは、小学校5年生の平高愛子ちゃんが制作しました。
愛子ちゃんの「いま・ここ」のイメージは、
「みんなのいま、ここ、だから、ひとりにひとつしかない指紋をつかって、
みんなの指紋を組み合わせて文字にすれば『いま・ここ』の生々しいいい感じがでると思う」
という想いから、「いま・ここ」というテーマにぴったりの、素晴らしいロゴが出来上がりました。

会期中は、こどもたちが必ず在廊していました。
小学校3年生の上河内航輔くんは、
在廊中もどこに看板置いたらみんなに来てもらえるかな?ここにチラシを置いたら見てもらえるかな?
とずっと考えていました。

作品は、こどもたちそれぞれの個性が光ります。
小学校2年生の中尾咲智ちゃんは、自画像を描きました。

自分の顔をよーく見て描いたのがひしひしと伝わる自画像です。
細かい髪の毛もよく見て描かれていて、すごい集中力だなあ、と思いました。

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8月5日(日)にはギャラリートーク&ライブペインティングが開催されました。
ギャラリートークでは、ゲストに町田市在住の油絵画家・並木スバルさんを
ゲストにお招きしました。

出展者みんなが自分の作品について語ったあと、
並木さんの画家としての目線からみんなの作品を語っていただきました。

いちばん印象的だったのは、小学校2年生の平井紗弥ちゃんのギャラリートーク。
大勢のお客さんの前で話すことはなかなかなく、
緊張しながらも大好きな*人物クロッキーについて語りました。

*人物クロッキーとは…人物を短時間で写し取ること。またその絵。
アトリエ・アルケミストでは制作前に必ず8分間の人物クロッキーを行なっています。

並木さんは、さやちゃんのクロッキーを見て、
「君は左利きかな?」と聞きました。
さやちゃんは首を横に振ります。

「いやね、さやちゃんの作品の人物はみんな右向きだよね。
人間はたいがい、右利きの人は左向きの人、左利きの人は右向きの人が描きやすいからね。
なぜかというと、人間まるを描くときはね、手癖というものがあるから、右利きの人は反時計回りの方が描きやすいはずなんですよね。
左利きの人は時計回り。
だからさやちゃんは左利きなのかな?って思ったんです」

さやちゃんは描きにくいと思った顔の向きは特にないそうです。
それを聞いて並木さんは「それはすごいね。」と感心していました。

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ライブペインティングは、アトリエ・アルケミストの卒業生である土屋慧さんをゲストに招きました。

関谷賢人くん、渡辺夏穂ちゃん、玉野翔大くん、留目大志くんの4名が
土屋さんのギター演奏を聴きながらそれを絵にする、という試みでした。
曲は、関谷賢人くんが大好きな「ONE OK ROCK」というバンドの「We are」。

小学校4年生の留目大志くんは、
演奏を聞いて「力強さ」を感じたそうです。
綺麗な緑色の中に強い力みたいなものを
感じられる作品を仕上げました。

小学校5年生の玉野翔大くんは、
音から「暗い」「火」のイメージを感じて、
赤い色や黒をふんだんに使った作品を完成させました。

最初は音を全身で感じ取り、描き進めれば進めるほど
どんどんイメージが湧いていく様子が見えて、隣で見ていてとてもワクワクしました。
同じ音楽を聴いているのに、
こんなに違うイメージを抱くのは不思議だなあ、と思います。

関谷賢人くんと渡辺夏穂ちゃんは、
2人で大きな画面に描くという新しい試みを行いました。
お互いが感じた感覚をぶつけながら、
時には打ち消しながら画面に「We are」が描かれていく様子は圧巻でした。

「この絵にタイトルをつけるとしたら何ですか?」という質問に対して、
賢人くんは「戦い」、夏穂ちゃんは「核」と答えました。

ギター1本で繰り広げられているとは思えないほどの音の迫力と、
こどもたち4人の気迫が重なり合って生まれる空間は、
「いま・ここ」でしか感じられない生きた空間でした。

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<まちだこどもがつくる展覧会 vol.1> 「いま・ここ」は、
述べ102名のお客様にご来場いただきました。
ご来場いただいた皆様、
ご協力していただいた「絵画造形アトリエ アトリエ・アルケミスト」の皆様、
フライヤーを快く置いてくださった皆様、
本当にありがとうございました!

まちだはまちだプロジェクト
文:塚原結友
写真:長田菜月、北村友宏、関谷賢人